調査レポート
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景気動向調査
 平成11年1月  (平成11年1月末調査)
 岐阜県中小企業団体中央会では、県内中小企業の現況、課題を迅速にとらえ、これらの情報を関係行政等へ提供するとともに、本会事業の活用に資することを目的に、中小企業団体情報連絡員制度(政府指定事業)を実施しております。

 当制度に基づき、県内の主要業種85組合に中小企業団体情報連絡員を設置し、毎月の調査報告を収集しております。

 本レポートは、その中で、県内中小企業の景況動向について取りまとめたものであります。
  〔 1 〕1月の特色
◆ 季節要因で売上、受注、60%超が減少
◆ 消費の低迷一層深刻
  〔 2 〕1月の概況
 当月の景気動向を景況感DI値で見ると、好転3ポイント、悪化45ポイントで、DI値はマイナス42ポイントとなり、前月のマイナス35ポイントに対し、7ポイントの比較的大きい景況悪化となっている。前月(12月)、前々月(11月)のマイナス30ポイント台から、10月のマイナス40ポイント台へ逆戻りした形となっている。

 しかし、例年1月は季節要因による売上減少が大きく、前月比で景況感が下降する傾向があり、その季節変動を加味した場合には、景気動向としてはマイナス30ポイント台に近づくことが推量され、また、昨年の5月〜9月間のマイナス50ポイント台に対しては、下げ止まりの傾向が残っているとの見方も出来る。

 このため、景気動向は流動的、不安定な状況にあると考えられる。

 1月の季節要因で、マイナス要因としては、第一に休日増による営業日数の減少、次いで年末需要の反動が挙げられ、プラス要因には公共工事施工の繁忙、冬用タイヤ等の冬物用需要、小売のバーゲンセールが挙げられる。
 これらの要因の中で、不況、消費の冷え込みが加わり、マイナス要因が大きく出ているが、プラス要因は低めの結果に終わっている。

 総合すると、消費の冷え込みが一層固まり、小売、衣料品等の消費需要の関連業種が益々業況が悪化、また、機械・金属関連も航空機関係を除き、需要減少、業況悪化となり、大半の業種が底這い、若しくは悪化となっている。その中で、個人住宅建築の需要が若干動き始め、地元中小企業者への受注の動きは弱いが、引き合い等の動きがあり、今後の動向に期待が持たれるところである。また、公共工事発注も各地で概ね出揃い、前年並みの受注が確保されるなど、改善の進展が見られた。

 前月比業況悪化の業種が特に多いのは機械・金属、サービス業、窯業・土石、繊維・同製品、小売業、商店街である。

 業況が好転したのは銘木、家庭紙で、順調な業況が続いたのは航空機関係である。



  主な業種区分の業況概況

食料品は、年末需要の反動の影響が大きく、大半が売上減少となっている。その中で、贈答品の割合が大きい菓子関係の低下は小さいが、調理、食材関係の落ち込みが大きい。資金繰り、収益状況の悪化傾向が強く、企業経営は益々厳しくなっている。

繊維・同製品は、川上業種では織物、ニットの製造を中心に売上、受注の減少で低迷が続き、アパレル関係では、天候不順の影響も受け冬物不振、春物出遅れで売上減少、業況悪化となっている。収益状況、資金繰りともに悪化傾向が強い。

木材・木製品は、建築関係では住宅建築需要の動きを受けて、一部に動きが出てきた。しかし、売上に明らかに出ているのは神社・仏閣関連需要のある銘木だけである。家具は、売上、収益、資金繰りともに悪化で、益々厳しい業況になってきている。

紙・紙加工品、印刷、プラスチックでは、すでに厳しい業況にあることに加え、季節要因による売上減少で、業況は低調横這いである。その中で、家庭紙の需要が上向いている。

窯業・土石の中の陶磁器関連は売上が前月比、前年対比ともに減少、業況の悪化が続いている。
 石灰等のその他の窯業関係業種も需要は低調横這い若しくは減少で、厳しい業況が続いている。
 土石は、建設工事の繁忙による需要期に当たっているが、動きが悪く、前月比売上減少となっている。民間工事需要の低迷の影響も依然大きく、厳しい業況が続いている。建設業の改善動向との相違が不安要因である。

機械・金属では、売上、受注とも減少傾向が強く、現在、最も下降度合が大きい業種であり、業況悪化が続いている。順調な業況が続いている航空機関係も、秋以降については懸念が出ている。大半の業種の収益状況が悪化しており、企業経営は厳しくなっている。

各種物産品は、年末需要の反動が大きく出て、売上が大幅に減少している。ギフトの売上では前年対比マイナス26ポイントであり、季節要因と変わらず大きい不況要因を挙げている。

卸売業は、季節要因による売上減少が挙げられ、陶磁器卸売は、季節要因に加え不況要因を挙げ、最悪の業況にあると分析している。

小売業は、通常年末需要の反動により売上減少となるが、今回は、前月(12月)の売上が年末需要の盛り上がりを欠いたため、前月比減少とはなっていない。消費需要の冷え込みの中で、季節変動さえ出ない低調な商況が続いている。また、量販店等の大型店の動向は、廉売よる売上増加を果たした店、来客者数は盛況でも売上には結び付いていない店等、商況が分かれ、必ずしも好調と言えない状況にある。これらを総合すると、小売業は依然底這い状況が続いていることとなる。

商店街は、地域により状況が異なるが、総合すると小売業と同様、売上不振が続き、底這いの業況が続いている。特に、東濃地方の商店街の商況が厳しい状況にある。

サービス業では最近、売上、受注の減少、業況の悪化が続いているが、当月も同様の動きが続き、また、季節要因も加わり、業況は益々厳しくなっている。特に、収益状況、資金繰りの悪化傾向が強く、今後の推移が懸念される。

建設業では、公共工事発注の進捗の地区別格差が解消、概ね出揃っており、公共工事関連の仕事量は概ね確保された状況にある。しかし、民需の落ち込みが大きいこと、受注単価が厳しいことから、景況の改善には至っていない。長期低迷の住宅建築は、政府の減税対策等で引き合い等の需要の動きが出て来ているが、地元の建築業にはまだ実需が出て来ていない。

運輸業では、稼働日数の減少による売上減少で前月比売上減少となっている。業況は前月と同様低調横這いで推移している。特に県域の単位では前年対比の業況悪化が大きい。

  主な調査項目での動向
売上動向は、増加4ポイント、減少65ポイントで、DI値はマイナス61ポイントとなり、売上減少傾向が極めて大きい。その要因には、休日増による営業日数の減少が最も大きく、次いで年末需要の反動、冬物商品の完了が挙げられる。これらのマイナス要因が作用したが、例年の傾向と異なるのは年末需要の反動が小さいものであったことである。衣料品等の買回り品を主体に、年末需要が低調であったため、反動も小さいものであった。
 また、全体の傾向についても、例年(12月)が低水準であったことから、当月の低さが一層深いものであり、需要動向は深刻さを増している。
 売上増加の業種はわずか3業種(回答)であり、減少の業種が特に多いのは食料品、窯業・土石、機械・金属、サービス業、繊維・同製品である。

受注動向は、増加4ポイント、減少61ポイントで、DI値はマイナス57ポイントとなり、売上動向と概ね同様の数値であり、また、極めて大きい減少傾向となっている。動向の要因も売上動向に酷似し、相違点としては建設業の減少傾向が売上の減少傾向に較べ大きいことが挙げられる。従って、業種別動向の特色も、売上動向と同様の事項となっている。

販売価格の動向は、上昇2ポイント、下降18ポイントで、DI値はマイナス16ポイントとなり、前月のマイナス20ポイントに対し、4ポイントの改善となっている。前月の前月比9ポイント悪化に対し、揺り戻しの回復となっている。
 前月に引き続き、販売価格業種が以前に較べ偏る傾向が見られる。長期間にわたり、全ての業種が価格低下を続けており、深刻な不況下の現状で、一層の価格低下は業界、企業にとって極めて厳しいものとなっている。
 下降業種が他に較べ多いのは窯業・土石、繊維・同製品、次いでサービス業となっている。

収益状況の動向は、好転0ポイント、悪化56ポイントで、DI値はマイナス56ポイントとなり、前月のマイナス33ポイントに対して23ポイントの極めて大きなマイナス増となり、昨年8月のマイナス54ポイントより2ポイントマイナス超で、まさに最悪の状況である。
 売上減少、価格の低下、取引先の信用不安等、収益状況を悪化させる要因が全て揃っており、また資金繰り悪化もDI値マイナス37ポイントと深刻な悪化であり、倒産・廃業の発生が危惧される状況にある。
 悪化業種割合が特に大きいのは食料品、繊維・同製品、木材・木製品、機械・金属、窯業・土石、サービス業である。

   〔 3 〕向こう3カ月の動向
 向こう3カ月の景気動向予想は、好転予想7ポイント、悪化予想42ポイントで、DI値はマイナス35ポイントとなり、当月実績のマイナス42ポイントに対し、7ポイントの改善予想となっている。
 例年、2月〜4月は、3月の季節要因による売上増で景況感が改善する傾向がある。今回もその傾向が出ているが、その動き、拡がりが弱く、特に入学、卒業、就職等に伴う消費需要に係る小売業の流通関係業種の改善が弱いという結果になっている。
 総合すると、水面下の中ではあるが、季節需要による売上増加業種を中心に業況の好転予想業種が出て、前月(12月)に見られた景気の底打ちの動きが再び窺えるような結果となっている。
 当月実績DI値と向こう3カ月予想DI値との比較で、悪化となる業種区分は無く、一方改善となっているのは一般機械、各種物産品、小売業、サービス業である。


売上動向予想
は、増加予想17ポイント、減少予想25ポイントで、DI値はマイナス8ポイントとなり、当月実績マイナス61ポイントに較べ、異常とも言える53ポイントの改善予想となっている。「増加」が大きく増え、「減少」が大きく減ったことによる。
 この増加要因は季節要因で、第一に営業日数の増大、第二に入学、就職、観光等の季節需要が挙げられる。
 売上増加予想の大きさに較べ、景況感の改善が小さいことから、水面下での増加のウエイトが大きいことが推量される。
 DI値がプラスとなっているのは木材・木製品、各種物産品、小売業で、減少予想が特に多いのは繊維・同製品、窯業・土石、サービス業、建設業である。

収益動向予想は、好転予想11ポイント、悪化予想33ポイントで、DI値はマイナス22ポイントとなり、当月実績のマイナス56ポイントに較べ、34ポイントの極めて大きな改善の予想となっている。特に好転予想が10ポイント台に登ったのは最近1年間には無いことであり、長期の厳しい状況下にあって、期待を感じさせる動きである。
 しかし、売上動向予想に見られるとおり、売上増加が季節需要によるものが大きいこと、景況感の改善が弱いことを考慮すると、改善動向が一時的なものになることが推測され、今後の推移を注目する必要がある。
 DI値がプラスであるのは木材・木製品、各種物産品であり、悪化予想が特に多いのは繊維・同製品、紙・紙加工品、窯業・土石、サービス業である。また、好転予想と悪化の両方が出ているのは機械・金属、サービス業、商店街である。


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