調査レポート
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景気動向調査
 平成11年5月  (平成11年5月末調査)
 岐阜県中小企業団体中央会では、県内中小企業の現況、課題を迅速にとらえ、これらの情報を関係行政等へ提供するとともに、本会事業の活用に資することを目的に、中小企業団体情報連絡員制度(政府指定事業)を実施しております。

 当制度に基づき、県内の主要業種85組合に中小企業団体情報連絡員を設置し、毎月の調査報告を収集しております。

 本レポートは、その中で、県内中小企業の景況動向について取りまとめたものであります。
  〔 1 〕5月の特色
◆ 景況感再び下降
◆ 消費低迷、止まらず
◆ 機械・金属の業況悪化が続く
  〔 2 〕5月の概況
 当月の景気動向を景況感DI値で見ると、好転1ポイント、悪化40ポイントで、DI値はマイナス39ポイントとなり、前月のマイナス34ポイントに対し、5ポイントの悪化となった。また、前月の前月比3ポイント悪化に続くものであり、景気の下げ止まりの見方が危ぶまれる傾向となっている。

 例年5月は、公共工事発注の途切れや、大型連休による営業日数減少等の売上減少要因が、観光需要等の増加要因を上回り、売上減少、景況の後退の傾向が強い。

 当月はこの季節要因に不況要因が加わり、需要の減少、景況の悪化となっている。

 当月の特記すべき動向としては、前月に引き続き消費需要の低迷、機械・金属の受注の減少等、全体的に需要の低迷、低下傾向があげられる。前月までの数カ月の間、需要拡大傾向が見られた建築関連業種は、業種によって動向が異なるが、総合すると伸び悩みの傾向が見られ、業況を好転させるほどの勢いには至っていない。

 このような厳しい景況の中で、企業経営は同業者間の激しい競争による収益悪化、経営圧迫が強まっており、景気動向についても消極的な見方が多く、マインドは改善していない。

 前月比業況悪化の業種が特に多いのは繊維・同製品、食料品、機械・金属、窯業・土石で、それぞれ半数を超える回答が景況悪化となっている。

 これに対し、堅調な業況が続いているのは航空機関連、景況が好転したのは情報関係である。

  主な業種区分の業況概況

食料品は、前月比売上が減少の業種が多く、また、前月に引き続き、大手メーカーと競合、大型店の廉売の影響もあり、厳しい業況となっている。

繊維・同製品は、織物等の川上業種、アパレルの川下業種ともに売上、受注の減少、景況感の悪化となっており、業況の悪化が続いている。その中で織物染色の売上は伸びたが、業況の改善には至っていない。

木材・木製品は、木造建築関係で前月まで売上増加の動きが続いたが、当月は横這いで、一服感が出ている。一方、家具は需要低迷の中で、需要期から閑散期に入り、経営が厳しくなって来ている。

紙・紙加工品、印刷、プラスチックは、全体的に前月比売上減少となっている。また、前年対比で見ても、家庭紙を除き、売上減少、業況悪化となっており、依然、業況の下降が見られる。プラスチックでは、春先から需要の回復の動きが出ていたが、当月は伸び悩み、下降の動きが見られる。特に産業資材は長期の低迷が続いている。

窯業・土石の陶磁器、モザイクタイルでは、前月に引き続き売上不振となり、先行きも不透明で極めて厳しい状況が続いている。輸出も低迷が続いている。建設資材についても、公共工事の端境期で荷動きが低調に推移している。

機械・金属は前月に続き、売上、受注の減少となり、さらに業況が悪化している。その中で、航空機関係と電気機械器具は前月比売上増加となっている。しかし、この2業種においても前年対比は減少となっている。機械・金属全般で力が弱まっている。

各種物産品では前月比売上の動向が分かれ、観光物産は増加、ギフトは減少となっている。しかし、前年対比では、ともに減少となり、依然、低迷が続いている。

卸売業では低迷が続いている中で、特に陶磁器卸は長期、且つ、深刻な業況不振が続いている。

小売業では、季節要因により売上が増加、あるいは減少した業種があるが、全般的に前月横這いの低調な業況となっている。

商店街は前月横這いの低調な業況となっている。消費者の買い控え、大型店との競合による不振との見方が多い。また、地域別で多治見では「まだ早いかもしれないが、景気の下げ止まり気配か」との意見があり、全体に厳しい状況の中で新しい動きとなるか注意したい。

サービス業は、情報関係で売上の増加、業況の回復が見られ、他の業種とは対照的である。旅館等、他のサービス業は依然低迷が続き、高山では観光客は増えても売上に反映しない状況が見られ、不況に打つ手のない困難な状況である。

建設業は、公共工事発注の端境期にあり、売上、受注が低調となっている。売上、受注がともに増加したのは産直住宅だけである。木材の動き等から、住宅建築が動き出しているとの見方がされるが、羽島、各務原地区では動きは鈍い。このギャップが問題となっている。このような需要状況にあって、建設業全体が受注不足にあり、採算割れ受注等の競争激化の弊害が出て来ている。公共工事の早期発注の要望が強い。

運輸業は概ね前月並みの低調横這いで推移している。岐阜地域と県域とを比較すると、広域となる県域貨物運送の方が業況は悪く、また、前月比も悪化している。

  主な調査項目での動向
売上動向は、増加14ポイント、減少51ポイントで、DI値はマイナス37ポイントとなり、前月のマイナス17ポイントに対し、20ポイントの大幅な下降となっている。
 例年、3月、4月の需要期に対する反動、公共工事の端境期、大型連休による営業日数の減少のマイナスの季節要因が大きく、前月比売上が減少している。
 当月も、それらの季節要因が機能し、前月比売上減少が大きく出た。特に、プラス要因である住宅建築、観光需要の中で観光需要が低調に推移し、その分、例年より減少傾向が強くなっている。
 季節要因とは別に、長期不況の影響が基盤にあり、消費の買い控え、節約ムードは依然根強く、流通、サービス業における需要を縮小している。
 また、機械・金属関係の売上・受注の減少が続いていることは、今後の景気の先行きを暗くするものであり、懸念されるところである。
 売上減少業種が特に多いのは窯業・土石、繊維・同製品、機械・金属、食料品、建設である。
 増加が明らかに出ているのは、情報関係である。

受注動向は、増加12ポイント、減少47ポイントで、DI値はマイナス35ポイントとなり、前月のマイナス21ポイントに対し、14ポイントの大幅な下降となっている。
 業種別に動向を見ると、概ね売上動向と同様であるが、建設業だけは売上動向と受注動向に差が見られ、売上は減少、受注は横這いとなっている。
 減少業種が特に多いのは窯業・土石、機械・金属、食料品、繊維・同製品である。
 また、増加が明らかに出ているのは情報関係である。
 建設業では、受注不足の中で採算割れ受注物件が出るほど受注競争が激しく、公共工事の早期発注を強く要請している。

販売価格の動向は、上昇3ポイント、下降21ポイントで、DI値はマイナス18ポイントとなり、前月より1ポイント改善している。しかし、3カ月連続で下降業種が増加しており、同業者間競合の激化が窺える。すでに長期にわたり厳しい収益状況にあり、この競争激化による収益圧迫は、企業に深刻な影響を与えるものと懸念される。
 これまで、下降業種が全般的に分散する傾向が強かったが、今回は下降業種の分布が窯業・土石、サービス業、鉄鋼・金属、木材・木製品にシフトしている。

収益状況の動向は、好転2ポイント、悪化42ポイントで、DI値はマイナス40ポイントとなり、前月のマイナス18ポイントに対し、実に22ポイントの大幅な下降となった。また、3月、4月がマイナス10ポイント台と、悪化の底打ち的な動きにあったことを考えると、まさに急転直下の下降と言える。
悪化の回答が半数を超えているのは食料品、窯業・土石、鉄鋼・金属、卸売である。
   〔 3 〕向こう3カ月の動向
 向こう3ヵ月の景気動向予想は、好転予想8ポイント、悪化予想37ポイントで、DI値はマイナス29ポイントとなる。当月実績に対して10ポイントの大幅な改善であり、また、マイナス30ポイントの大台を超え、前月の動向に対して一転する、極めて望ましい予想である。

 この変化は好転予想の7ポイント増、悪化予想の3ポイント減によるものであり、景況好転のパターンになっている。

 懸念される点としては、前月調査おける向こう3カ月予想で2ポイントの改善予想が、当月実績では反対に5ポイント悪化しており、予想と実績の相違が大きいことである。

 この予想の特色に、好転業種が木造住宅建築関連業種と情報サービスに特化していることがあげられる。その他の業種は、概ね前月横這いで、航空機関連を除き厳しい業況が予想されている。

 好転予想の業種は米菓、木材、集成材、映像制作、情報サービス、産直住宅である。また、堅調な業況が続いていた航空機関係は、操業日数の減少等による売上減少が懸念されてる。

 悪化予想業種が特に多いのは、鉄鋼・金属、窯業・土石、繊維・同製品、建設業、食料品である。

売上動向予想は、増加予想11ポイント、減少予想26ポイントで、DI値はマイナス15ポイントとなり、当月実績のマイナス14ポイントに対し、若干のマイナス増の予想となっている。景況感予想とは異なった動向予想となっており、需要増が景況好転業種に片寄り、業種範囲が拡がっていないことを推測させる。
 また、当月実績との相違点として「不変」が当月実績は44ポイントに対し、向こう3カ月予想は66ポイントと大幅に増大したことがあげられ、需要低迷が続くとの予想が圧倒的に多い。
 DI値がプラスの予想になっているのは木材・木製品、各種物産品であり、反対に減少予想が多いのは機械・金属、商店街、繊維・同製品、窯業・土石である。

収益動向予想は、好転予想5ポイント、悪化予想35ポイントで、DI値はマイナス30ポイントとなり、当月実績のマイナス40ポイントに対して、10ポイントの大幅な改善予想となっている。しかし、当月実績の悪化が元々過度なものであり、マイナス30ポイントでも未だ厳しい数値であり、企業経営の厳しさは軽減されていない。
 DI値がプラス値となっているのは木材・木製品だけである。一方、悪化予想が特に多いのは食料品、鉄鋼・金属、建設業、窯業・土石である。



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