調査レポート
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景気動向調査
 平成11年7月  (平成11年7月末調査)
 岐阜県中小企業団体中央会では、県内中小企業の現況、課題を迅速にとらえ、これらの情報を関係行政等へ提供するとともに、本会事業の活用に資することを目的に、中小企業団体情報連絡員制度(政府指定事業)を実施しております。

 当制度に基づき、県内の主要業種85組合に中小企業団体情報連絡員を設置し、毎月の調査報告を収集しております。

 本レポートは、その中で、県内中小企業の景況動向について取りまとめたものであります。
  〔 1 〕7月の特色
◆ 景況感の改善は一服
◆ サービス業が好転
◆ 夏季商品が低調で終る
  〔 2 〕7月の概況
 当月の景気動向を景況感DI値で見ると、好転5ポイント、悪化28ポイントで、DI値はマイナス23ポイントとなり、5月のマイナス39ポイントから2カ月連続の改善であり、特に前月のマイナス35ポイントに対しては12ポイントの大幅な改善である。

 平成10年5月〜同9月の間のマイナス50ポイント台を底とし、その後、当月までの間2つの山を持ちながら、トレンドとしては改善(悪化が弱まる)が進んでいる。

 例年、7月は公共工事の新年度分発注の本格化、観光需要、中元需要、夏季需要があり、家具等の不需要期にあたる業種もあるが、通常月に較べれば売上増等、業況が改善する月である。

 しかし、当月の業況改善は季節需要によるものは一部で、建築関連業種とサービス業の業況好転が大きく寄与している。夏季商品需要、中元需要は低調であった。また、公共工事においても発注は出たが、施工段階には至らず、売上には結びついていない状況にある。

 当月のレポートの中には重油、プラスチック材料等の石油系の値上がり、一方、市況低迷で販売価格の転稼が困難な状況にあり、このコストアップの影響を懸念する意見が出て来ているため、景気動向の新しいマイナス材料となることが懸念される。

 これらを総合すると、木材等建築関連の業種だけが改善が続き、他の業種は需要不足、競争激化、低収益の厳しい状況が続いていることとなる。

 前月比業況悪化の業種が特に多いのは窯業・土石、食料品、機械・金属、繊維・同製品である。

 これに対し、業況が改善したのは木材、集成材、自動車車体整備、高山旅館である。ただし、自動車車体整備では一時的な現象としている。

  主な業種区分の業況概況

食料品は、前月比売上が減少となり、業況が悪化している。特に長期不況にあっても、他に較べ比較的に安定していた菓子業界も悪化傾向が出てきている。

繊維・同製品は、季節要因によるものを含め、前月比売上増加の業種が増えたが、前年対比では減少、あるいは横這いが多く、業況は変わらず厳しい。特にアパレルでは売上不振、低価格化で一段と厳しさを増している。

木材・木製品は、一般住宅関係の木材需要が拡大を続けている。一方、銘木、東濃ひのきの高級材は低迷を続けている。家具は夏枯れ時期にもあたり、厳しい市況となっている。

紙・紙加工品、印刷、プラスチックは、全体低調な業況ではあるが、その中で、紙加工品は非常に厳しく、家庭紙、プラスチック(食品容器、家庭用品、建築資材)は比較的堅調と業種により状況が分かれている。

窯業・土石の陶磁器、モザイクタイル関係は、概ね前月横這い低迷が続いている。LPガス等の燃料の値上がりが出て来ており価格への転嫁ができないため、経営圧迫要因が強まることとなる。建設資材では、荷動きが出て、生コンクリート、砂利で前月比売上増となっているが、前年並みあるいは前年割れの水準で業況改善には至っていない。

機械・金属は、全般的に前月比で売上減少、受注単価の下降、収益状況悪化が見られ、引き続き業況悪化となっている。堅調な受注が続いた航空機関係でも受注の減少が見られた。

各種物産品は、観光物産系とギフト系で動向が分かれている。同じ点は、売上が前年割れとなったことである。相違点はギフト系は中元需要で前月に引き続き前月比売上増、観光物産系は前月の動向と反対に前月比減少となっている。

卸売業は、前月に引き続き陶磁器卸はさらに業況悪化、飛騨地区総合卸は、前年並み、前月横這いの業況となっている。陶磁器卸では、贈答品、引出物等の伝統的需要の大幅な減少等、構造的変化が出ている。

小売業は、夏季需要も低調で前月横這い、低迷が続いている。

商店街は、概ね前月横這いの低迷、大半が前年割れの業況となっている。前月までの数カ月間、改善が続いていた多治見商店街も一転して売上が減少し、前年割れとなった。夏物製品需要は低調で、バーゲンセールも盛り上がりがないまま終了し、消費の冷え込みの深さを表している。

サービス業は、唯一悪化業種が無く、また好転業種が2業種出ており、業況が改善している。しかし、好転業種を個別に見ると、一時的現象、季節要因との見方がされ、景気回復要因は指摘されていない。産業全般が厳しい不況にある中では、明るい動きとなっているが、先行きの業況推移には不安がある。

建設業は、公共工事発注が出始め、受注が増加している。しかし、売上は施工段階に入っていないため、増加が弱く、概ね前月横這いとなっている。一方、一般住宅建築では、報道等の情報とは異なり、新規住宅着工の受注が少なく、関係業種は低調に推移している。

運輸業は、概ね横這い、低調な業況が続いている。

  主な調査項目での動向
売上動向は、増加23ポイント、減少29ポイントで、DI値はマイナス6ポイントとなり、前月のマイナス14ポイントに対し、8ポイントの改善となっている。この改善は繊維・同製品、窯業・土石、サービス業で売上増加業種が拡大したことによるものである。7月の季節要因が働けば小売業、商店街、建設業で売上増加が出ることとなるが、今回はこれらの業種が弱く、夏季需要は低調に推移した。
 また、機械・金属の売上減少が続いており、今後の景気動向の大きな不安材料となっている。
 これらを総合すると、売上増加業種の拡大基調は出て来たが、力強さが欠けており、先行きの不透明感は払拭されていない状況にある。
 売上増加業種が多いのは繊維・同製品、窯業・土石、サービス業、建設業、反対に減少業種が多いのは食料品、機械・金属である。

受注動向は、増加16ポイント、減少29ポイントで、DI値はマイナス13ポイントとなり、前月実績マイナス15ポイントに対し、2ポイントの改善となっている。売上動向のDI値マイナス6ポイントと較べると改善の動きが小さい。
 新年度の公共工事発注が動き出し、建設業の受注増が強い中で全体の受注動向の動きが低いことは、他の産業で反対に減少傾向にあることとなる。
 このため、プラスの季節要因の影響を除外した場合は、前月比2ポイントの改善は相殺され、概ね前月比横這い、若しくは下降で推移しているものと推測される。
 受注減少業種が特に多いのは食料品、機械・金属である。増加業種が多いのは建設業で、DI値はプラスとなっている。また、DI値±0は繊維・同製品、木材・木製品、サービス業である。

販売価格の動向は、上昇2ポイント、下降18ポイントで、DI値はマイナス16ポイントとなり、前月のマイナス26ポイントに対し、10ポイントの大幅な改善となった。しかし、前月が異常に低い数値であり、前々月(5月)のマイナス18ポイントに較べれば、若干の改善に止まっていることから、実質は改善の力は大きくないと考えられる。
 下降業種は、殆どの業種区分に分散しており、産業全般の傾向になっていると考えられる。その中で、他に較べ下降業種が多いのは食料品と建設業である。
 上昇したのは、織物染色と石油販売である。

収益状況の動向は、好転6ポイント、悪化34ポイントで、DI値はマイナス28ポイントとなり、前月のマイナス31ポイントに対し3ポイントの改善となっている。5月のマイナス40ポイント、6月の31ポイントに続き、2カ月連続して改善した。
 悪化業種は、食料品(7回答中6)、機械・金属(10回答中7)に著しく偏り、他は少数分散になっている。
 好転業種は木材・輸出陶磁器、家電機器販売、自動車車体整備、広告美術である。
   〔 3 〕向こう3カ月の動向
 向こう3ヵ月の景気動向予想は、好転予想6ポイント、悪化予想31ポイントで、DI値はマイナス25ポイントとなり、当月実績のマイナス23ポイントに対し、2ポイント悪化予想となっている。

 当月実績との対比では、一部の業種区分で若干の変化はあるが、全体的に当月横這いの推移となっている。全般的に需要不足、激しい同業者間競合、価格低迷、先行不透明の見方が強く、マインドも萎縮している。

 住宅建築については、木材関係は堅調を予想しているが、建築、その他の関連では動きは弱く、景気回復への力としては不足感が強い。

 このような中、景気回復への動きは未だ窺うことができない。

 好転予想がプラス又は±0となっているのは、木材・木製品、サービス業、建設業で、反対に悪化業種が特に多いのは食料品、繊維・同製品、窯業・土石、機械・金属、商店街である。

売上動向予想は、増加予想16ポイント、減少予想26ポイントで、DI値はマイナス10ポイントとなり、当月実績のマイナス6ポイントに対し、4ポイントのマイナス増、低迷が続く予想となっている。8月の夏期休暇による営業日数の減少を要因にあげる業種も一部あるが、大半は消費需要の低迷等不況要因による売上不振、価格低下が基調にあり、これに若干の季節要因を加味した予想となっている。
 景気動向としての見方には、売上動向の一時的な、あるいは若干の動きは意味を持たない状況が続いている。
 DI値がプラスの予想は繊維・同製品、木材・木製品、建設業、運輸業となっている。一方、減少業種が特に多いのは窯業・土石、機械・金属である。

収益動向予想は、好転予想6ポイント、悪化予想23ポイントで、DI値はマイナス17ポイントとなり、当月実績のマイナス28ポイントに対し、11ポイントの大幅な改善予想となっている。この改善は、「悪化」の減少によるものである。
 このため、「悪化」の勢いが緩くなったもので、好転に向けての動きにはなっていないこととなり、実質的には、概ね前月並みで推移するものと予想される。
 DI値がプラスになっているのは、木材・木製品だけで、反対に悪化業種が特に多いのは食料品、機械・金属、商店街である。

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