調査レポート
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景気動向調査
 平成12年7月  (平成12年7月末調査)
 岐阜県中小企業団体中央会では、県内中小企業の現況、課題を迅速にとらえ、これらの情報を関係行政等へ提供するとともに、本会事業の活用に資することを目的に、中小企業団体情報連絡員制度(政府指定事業)を実施しております。

 当制度に基づき、県内の主要業種85組合に中小企業団体情報連絡員を設置し、毎月の調査報告を収集しております。

 本レポートは、その中で、県内中小企業の景況動向について取りまとめたものであります。
  〔 1 〕7月の特色
◆ 低価格、低収益が強まる。
◆ 消費関連の低迷続く。
◆ 機械・金属、再び鈍化。
  〔 2 〕7月の概況
 当月の景気動向を景況感DI値で見ると、好転5ポイント、悪化30ポイントでDI値はマイナス25ポイントとなり、前月のマイナス24ポイントに対し、1ポイントの悪化、概ね横這いの低迷が続いている。

 例年7月の一般的需要動向は6月に類似し、異なっているのは公共工事の発注が動き出すことである。このため、7月は6月に較べ景況感が若干改善する傾向がある。

 しかし、今回は、猛暑により家電等一部商品で需要が増加したが、全般的に盛り上がりに欠け、また、公共工事については発注が遅れているため受注されていないというマイナス要因があり、景況感が反対に若干下降している。

 業種別の動向を見ると、特記事項として、食料品、衣料品、旅館、クリーニング等家計消費関連が前月に引き続き低迷したこと、猛暑により家電等で売上が増加した業種があるが、低価格のため収益、景況感が改善していないことがあげられる。同業者間競合、元請等発注元のコスト削減要請、輸入品の急増等、価格引き下げ要因が益々強まっている。

 また、前月景況感の好転があり、回復が期待された機械・金属が再び悪化に転じ、基盤の弱さを表わし、期待が薄まっている。加えて、石油系の原材料、燃料のコストアップ、製品価格への転嫁難も、収益悪化状況にある中小企業にとっては深刻な問題となっており、業況悪化要因の一つになって来ている。

 これらを総合すると、景況改善の要素が極めて少ない中で、悪化要因が根強く、また、拡充傾向を持っており、今後の先行不透明感がさらに濃くなっているものと推測される。

 コメントの中には、依然景気回復策の要望が多いとともに、政府の景気回復基調の発表に対し、中小企業には実感が無いとの意見が少なくない。

 前月比好転業種は合成繊維織物、家電販売、広告美術、板金である。

 前月比悪化業種が多いのは繊維・同製品、商店街、機械・金属である。

  主な業種区分の業況概況
食料品は、前月動向とは反対に売上減少の動向となっている。猛暑による影響が豆腐を除いて出ている。景況感、収益状況ともに前月に引き続き悪化傾向となっている。また、前月同様、量販店等との競合、消費者の低価格志向等により販売価格の下降が続いており、業況は全般的に悪化している。


繊維・同製品は、アパレルの夏物不振。また、全般的に秋・冬物、春・夏物の引合等の出遅れ等により売上、受注の減少傾向が強く、景況感の悪化が大きい。需要の低迷、輸入品の増大があり、販売価格が下降、収益悪化も大きく、業況が益々厳しくなっている。その中で、合成繊維織物は回復の動きが出ている。

木材・木製品は、新規住宅着工の低迷で、需要不足の状況が続き、業況低迷が続いている。特に家具では、依然輸入品の影響が大きく、需要低迷も重なり、業況が深刻である。取引先(販売先)での信用不安も大きな問題となっている。木材では、在米型住宅の不振、プレカット住宅堅調の傾向が続き、また、「品確法」への対応の課題もあり、在来の日本住宅建築関係の企業が厳しい対応を迫られている。

紙・紙加工品、印刷、プラスチックでは、前月比売上増加の傾向となっている。しかし、紙、プラスチックで原材料の値上がりがあり、また、販売価格への転嫁が困難であるため、収益は改善していない。また、景況感も概ね横這いで、依然業況は厳しい。


窯業・土石では、陶磁器関係は低調な前月に横這い、建設資材関係は前月比、売上増加となっている。ともに、長期の不振が続いており、売上増加のあった建設資材関係でも収益状況、景況感への影響は殆ど見られない。厳しい業況の中で、燃料コストの上昇が企業経営を一層圧迫している。

機械・金属は、需要動向が2月、3月回復、4月下降、5月横這い、6月回復と変化し、当月は横這い、一部下降となっている。この流動的な状況の中、未だ、確かな回復の動きが出て来ていない。また、取引先のコスト削減要請が強く、受注単価が厳しいため収益の悪化傾向が強い。企業間の業況格差が大きくなっているとの指摘が多い。

各種物産品は、動向が分かれ、観光物産関係が前月比好転、ギフト関係が前月比悪化となっている。しかし、前年対比ではともに前年割れとなっており、依然厳しい業況が続いている。

卸売業は、前月と概ね同様で、陶磁器卸では前月に引き続き需要減少、消費需要の低迷、輸入品との競合等、マイナス要因が多く業況が悪化している。飛騨地区総合卸では、総合すると前月横這いであるが、業種間にバラツキが出ている。

小売業は、半数が前月比売上増加、他は横這いである。増加の理由には家電関係が猛暑、眼鏡販売がボーナス支給、共同店舗が夏イベントを挙げている。夏物婦人衣料等、他の夏物製品では猛暑であっても特に需要が出ていない。また、大型店等との競争、消費節約による低価格の傾向が依然強く、売上が増加しても収益改善には結び付いていない状況にある。これらを総合すると、需要動向は依然低く、業況としては前月概ね横這いとなっている。

商店街は、一部季節要因により前月比売上の若干の増加が見られるが、総合すると、概ね前月横這い推移となっている。また、前年対比では、全ての商店街が前年割れとなっており、依然厳しい業況が続き、景況感は悪化傾向が強い。商店街での空き店舗の増加、活性化施策の課題等、商店街問題を指摘する声が大きくなっている。


サービス業は、前月比、前年対比ともに売上動向が業種によって異なっている。旅館、クリーニング等個人消費関連では不振、情報関連では堅調となっているが、総合すると前月横這いの傾向となっている。



建設業は、民需は低調横這い。公共工事も発注時期が遅れており、まだ、受注できていない。このため、前月比の売上、受注はともに減少となっている。また、受注不足のため受注競争が激化、受注単価が益々厳しくなっている。厳しい業況が続いている。公共工事の早期発注の要望が強い。

運輸業は、岐阜地域貨物運送は前月横這い、県域貨物運送は、前月比、前年対比ともに売上が増加し、動向が分かれている。向こう3ヶ月の予想が横這い推移であることから、県域貨物運送の当月の売上増加で、回復の動きを推測することは困難である。このため、業況としては前月横這いで推移しているものと推測される。
  主な調査項目での動向
売上動向は、増加24ポイント、減少27ポイントでDI値はマイナス3ポイントとなり、前月のマイナス1ポイントに対し、2ポイントの悪化となっている。
 例年7月は、季節需要としては前月横這いの傾向に、公共工事発注が加わり、改善の傾向が出る。しかし、今回は公共工事の発注が遅れ、未だ、工事受注が進んでいない。この影響を受け、増加ではなく、若干の減少の動向となっている。
 また、猛暑に対し、夏物需要が大きく出て来ることが期待されたが、家電では出ているが、衣料品等、他の商品では盛り上がりを欠き、売上増加の動きに勢いを欠いている。
 前月、売上増加の動きが出て期待された機械・金属、木材関係の一部では、当月は下降傾向が出ており、底の弱さが窺える。これらを総合すると、夏期需要で若干の売上増加が見られたものの、全体的には消費需要の低迷、不況により需要回復は見られず、概ね前月横這いで推移している。
 売上増加業種が多いのは窯業・土石、小売業。減少業種が多いのは繊維・同製品、建設業である。

受注動向は、増加16ポイント、減少27ポイントで、DI値はマイナス11ポイントとなり、前月のマイナス16ポイントに対し、5ポイントの改善となっている。売上動向に比較すると、「増加」の回答が少なく、また、その減少分が各業種に分散しており、業種別に見た場合は、商店街を除き、売上動向と類似した傾向になっている。このため、前月比全般的に弱含みで、受注増加の動きは弱く、低迷を続けている。特記事項として、企業間の格差が出て来ている業種が増えていることがあげられる。
 増加業種が多いのは小売業。減少業種が多いのは食料品、繊維・同製品、建設業である。

販売価格の動向は、上昇3ポイント、下降20ポイントで、DI値はマイナス17ポイントとなり、前月のマイナス16ポイントに対し、1ポイントの悪化で、概ね横這いとなっている。すでに長期にわたり下降が続いている中で、その上での下降であり、市況は極めて厳しいものになっている。売上高が増加しても収益が改善しない業種が多く、深刻な低価格の動向となっている。
 当月も前月に続き、下降業種に偏りが見られ、繊維・同製品、建設業、木材・木製品、食料品に多い。

収益状況の動向は、好転7ポイント、悪化31ポイントで、DI値はマイナス24ポイントとなり、前月のマイナス21ポイントに対し、3ポイントの悪化である。需要動向と比較した場合、この収益状況の悪化は大きいものとなっている。
悪化要因には、売上不振、低価格、原材料(石油系・紙)の値上がりがあげられている。悪化業種が多いのは繊維・同製品、機械・金属、商店街、食料品である。好転の回答は6件あるが、それらは1業種区分に1件と分散しており、業種区分の動向判断に影響を与えていない。
   〔 3 〕向こう3カ月の動向
 向こう3ヵ月の景気動向予想は、好転予想8ポイント、悪化予想28ポイントで、DI値はマイナス20ポイントとなり、当月実績のマイナス25ポイントに対し、5ポイントの改善予想となっている。

 当月実績値との比較では、「好転」が若干増え、「悪化」が若干減少しており、形としては回復の動きとなっている。
 業種区分別に当月実績と比較すると、繊維・同製品で「悪化」から「横這い」に、サービスで「横這い」から「好転」に変化、他は、概ね当月実績と同様の傾向となっている。

 向こう3ヶ月には、季節要因としてのプラス要因、マイナス要因が多様に混在し、9月、10月の秋冬物の消費需要、公共工事発注、施工のプラス要因に関する業種で売上増加予想が若干ではあるが出ており、一方製造業での夏期休暇による売上減少予想は少なく、総合すると季節要因が需要増加に寄与しているものと推測される。

 しかし、売上増加業種と景況感改善業種とは必ずしも一致していないので、季節需要による景況感の改善にはなっていない。このため、景況感改善の要因の判別が難しく、また、変化も小さいため、景気回復における位置付けなど景況動向の評価が困難である。

 これらを総合すると、季節要因効果への期待が小さく、また、消費需要の低迷、輸入品との競合、低価格等、厳しい環境条件に変化はなく、全体的には、当月並みの厳しい業況で推移するものと予想される。
 好転予想業種は集成材、機械・工具販売店、眼鏡販売、広告美術、情報サービス、自動車タイヤ整備販売、鉄構造物である。

 悪化予想業種が特に多いのは食料品、商店街、建設業である。

売上動向予想は、増加予想13ポイント、減少予想18ポイントで、DI値はマイナス5ポイントとなり、当月実績マイナス3ポイントに対し、2ポイントのマイナス増加となっている。
 向こう3ヵ月には、9月、10月が含まれており、これらの月は例年衣料等の秋冬物の需要、公共工事の発注、施行、食料品の需要等プラスの要因が強く、売上増加の動きが出ている。
 今回も、これらの季節需要に係る業種では当月実績に対する改善が見られたが、流通業、窯業・土石、一般機械における売上減少が強く、結果として売上動向は若干の減少傾向となっている。 また、季節需要に係る業種においても、改善の幅が小さいことも、全体の売上動向を引き下げる要因にもなっている。
 生活関連物資、流通業の不振予想から、消費需要は依然低迷することが予想されるなど、季節需要を除外した場合、全般的に当月並みの厳しい売上状況で推移するものと予想される。
 その中で、情報サービス等事業所向けサービスの業種に上昇の動きが見られる。
 増加予想業種が多いのは、サービス業、建設業である。反対に減少予想業種が多いのは窯業・土石、繊維・同製品である。

収益動向予想は、好転予想5ポイント、悪化予想30ポイントで、DI値はマイナス25ポイントとなり、当月実績のマイナス24ポイントに対し、1ポイントのマイナス増加となり、概ね横這いの動向予想となっている。
 業種別に当月実績値と比較すると、殆どの業種区分が変化が小さく、建設業が他に較べ悪化予想割合が大きくなっている。このため、全体的に当月実績の厳しい状況が向こう3ヵ月にも続く予想となっており、また、建設業においては公共工事発注が本格的に動いても受注競争による低価格のため、収益が反対に悪化することが予想されている。
 売上不振、同業者間競合、あるいは輸入品との競合による低価格等の収益悪化条件が依然続くものと予想されている。
 悪化予想業種が多いのは繊維・同製品、機械・金属、窯業・土石、DI値0値は木材・木製品、サービス業である。また、極くわずかではあるがDI値がプラス予想になったのは商店街である。

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