地球にやさしい道づくりを

藤本 久子



「道の道とすべきは常の道にあらず」
 老子第一章の冒頭です。流れの表にかつ結びかつ消える泡沫のように人の命自体、儚いものですが、まして時流に翻弄されて浮き沈みする木の葉舟のような企業体の明日の運命など、おして知るべしでしょう。第二次大戦で不沈空母が沈んでしまったように、JAPAN as No1とうたわれた日本丸の屋台がかしぎ、そこここで浸水が始まっているというのが今日の状況です。その泥水を汲み出す作業に目を奪われているところですが、それだけではなく、精神を未来に向かって解き放ち、新しい船の建造を構想することも大事ではないでしょうか。われわれの前に道はなく、われわれの後ろに道ができるのです。
人種・経済・宗教のからみあいから、生存の場を求め、醜く争っているうちに、わたしたちの意識から、「人類と地球の関係性」がすっぽり抜け落ちてしまいました。地球はいま、痛い痛いと泣いています。山の麓の陽だまりでひっそりと畑を耕していた人類が、ブルドーザーを大量動員して山をえぐり、地の底に眠っていた石油を根こそぎ抜き取って、飽くことを知らぬどん欲さで生態系を崩してしまったからです。不景気・経済成長の失速など、ものの数ではない、もっと重大な危機が迫っていることをわたしたちは自覚すべきではないでしょうか。消費スタイルを革命的に変更しないかぎり、食糧もエネルギーも枯渇する本当の飢えが、ほんの数年後に待ち構えているのです。
 現在、すべての工業ジャンルで世界標準化をめざし急成長しているお隣りの中国を考えてみましょう。彼らのうちの7000万人が日本人と同じ所得水準に達したといいます。やがて10億の人々が一家に2台ずつ車をもつことになるでしょう。自動車産業は万万歳です。日本の景気も回復するかもしれません。でも、そのとき、地球の空気はどうなっているでしょうか。酸素がない!! 
 経済か生存か。大きな選択を迫られているのです。いま、研究者を中心にして、世界的な規模で、ひとつの合言葉が普及しつつあります。Sustainabiltyという単語がそれです。Sustainは持続するという意味です。abiltyは可能性を表す接尾語です。この語義に反する企業活動を試みると、環境破壊者として指弾を浴びることになるでしょう。
 かつて「開発」という言葉は富をめぐる夢と希望の象徴でした。今日ではそれが「破壊」の同義語として、何よりも嫌悪されるようになってしまいました。わたしたち自身が発想を変え、周りの人々も変えていかなければ生存の保証がないからです。この道筋に沿った経済活動だけが許される時代であることを認識するところから、新しい道の模索が始まります。地球を崩すのではなく、地球を築き、緑を築き、きれいな水と空気を地球に返してあげる環境Developerとして、この協会が雄雄しく立ち上がってくださることを期待しています。



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