茶碗
高:6.7cm、口径:12.5〜14.0cm、高台径6.5cm |
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器形が歪み『ひょうげた』といわれる織部の沓形茶碗。さらに器面の一部(ほとんど正面)を間取りして、そこに草絵や幾何学的な文様を描くという発想は、桃山時代においては画期的なことでした。 織部独特の強烈旺盛で自由闊達な造形感覚に魅せられ、沓形茶碗に挑む人は多いのです。 |
しかし、無理に歪ませたり、力強さを出そうとやたらにヘラ目を入れたりしているうちに、見るも無残な茶碗になってしまうことがあります。 そんな失敗をしないためには、土をあまり均一化しないで、ロクロの回転スピードを緩めるとよいです。そうすることによって、歪みも自然で、嫌味がなくなります。 |
主な道具:左から 刃刀、木ベラ、シッピキ。 |
ロクロを挽く |
◆ここがポイント ロクロに土をのせます。織部や志野の茶碗を挽く場合、練り土をあまり均一化しない方が良いです。その方が『沓形』といわれる変形や歪みが自然に出ます。 |
◆ここがポイント もう一つ大事なポイントは、ロクロの回転スピードを緩めることです。その方が、土のもつ柔らかさや形の面白さを自然に引き出せるからです。ロクロをゆっくり回しながら、両手で土全体を包み込むようにして、まず左手親指で中心を窪ませ、次いで両手親指で内側を拡げていき、左手をそっと放していきます。花の蕾が徐々に膨らんで開き始める様をイメージしながらやるとうまくいきます。 |
右手で土を挟むようにし、左手人差指と中指を揃えて外側から支えながら、ゆっくりと挽き上げていきます。 | 口縁まで挽き上げたら、右手人差指で口を押さえて締めます。 | 内側のロクロ目を木ベラで消します。右手は、木ベラをもって内側にあてます。左手は、親指を木ベラの縁に軽く添え、人差指と中指を揃えて外側から木ベラ部分を押さえます。左右の手を均等に同時に動かして、下から上へ挽き上げ、右手人差指で口を押さえて締めます。 |
シッピキで底を切ります。 | カメ板にのせるとき、意識的に重心をずらすようにもち上げます。 | ◆ここがポイント カメ板にのせたあと、仕上がりのイメージに合わせて変形させます。手を底の方に回して、上にもち上げるようにすると、無理なく自然な沓形になります。 |
削り高台 |
茶碗の場合、特に削りのタイミングが大切です。口縁が適度に硬くなっていて、腰部から底部にかけてはまだ柔らかいという状態が削りどきです。手ロクロの上にタオルなどを敷き、茶碗を伏せ、底に刃刀を入れます。高台の大きさを決め、高台脇をひと削りします。 | ◆ここがポイント 底部や腰部の土の厚みを確かめてから、再び高台脇に刃刀を入れ、ざっくりした、゛ささくれた″削り目を出します。それには、ヘラの選定もポイントになります。ヘラは、土が粘りつかない木製、特にクロマツでつくったものが良いです。 |
高台脇に再度両刃を入れ、高台の形と高さを決めていきます。あらかじめ円形か、楕円形か、あるいは角ばらせるかなど、高台の形のイメージをつかんでおきます。 |
刃刀を逆さにして、柄側で高台の内側をそぎ取っていきます。刃刀は動かさずに、茶碗に添えた左手でロクロを時計回しに動かしながら、その動きに身を任せるように刃刀を使い、高台を削り出していきます。高台の幅は、あまり狭くしない方が良いです。 |
口にヘラを入れます。飲み口を刃刀でそぎ取り、それとのバランスを考えながら、口に数カ所の削り目を入れます。 | ◆ここがポイント 成型の仕上げには、必ず手にとって、喫茶のしぐさをしてみたり、全体の形や高台のバランスなどを目の高さで眺めてみます。 |
最後に高台脇にサインを入れます。サインの位置は、正面を外し、正面から約90度回した飲み口(あるいは飲み口の反対側)の下あたりにしておくと良いです。 |